■朝夕、家を見ながらの楽しい散策。
 アパートの周囲には瀟酒な一軒家が立ち並ぶ住宅街がひろがっていた。
手入れの行き届いた緑の芝生に煉瓦の家、あるいは白くペンキ塗りした木造の家が、こんもりと生い茂った木々の中にゆとりをもって立ち並び、いかにもアメリカらしい裕福な風景がそこにあった。

 朝夕の行き帰りや休みの日には道を変えながら歩いてみた。道すがらいろいろな家を見ながら散歩するのは実に楽しい。家の形は千差万別だが街並み全体としては統一がとれていておもしろい。
そういえば日本ではこんなふうに散歩できるところは少ないなーとどうしても思ってしまう。

 もっとも近くからみるとどの家も結構古くて、あらが目立つが。それにしても建築中の家はもちろん、新築の家もほとんどみかけないのは不思議だ。

■JFKの生家での体験。
 ある時、ボストンの案内書を読んでいて、かの有名なJ.F.ケネデイ大統領の生家がここブルックラインにあって公開しているのを知った。
せっかくだから一度見ておこうと思って住所をみるとBeals st. 83となっている。そこでブルックラインの地図を持ってきてBeals st.を探してみると意外とアパートから近く、歩いていけそうな距離であった。
 どうもいつも散歩しているあたりからもう一歩足を延ばせば見つかりそうだ。

 そこで5月のある日曜日、子供たちを誘ってJ.F.Kの生家探しに出かけることにした。車で出かけたが簡単にみつかるだろうとたかをくくっていた。ところがこのBeals st.というのがなかなか見つからない。

すべての通りには○○st.や○○Avenueなどとした名前がついていて四つ辻には必ず標識があるのだが、どうもBeals st.は小さな通りで、おまけに路が入り組んでいてわかりづらい。一方通行も多く、思ったように車を走らせられない。
それでも1時間ほど走りまわってようやくBeals st.を見つけた。

ここまで来ればあとは家の表札を順番に83番までたどっていけばよい。83番と82番の間に家を建てたら番地はどうなるんだろうと要らぬ心配をしながらゆっくり車を走らせていると、やがて3階建ての青い木造の家の前に星条旗を掲げた83番にたどりついた。ここだ、ここだ。間違いない。

中へ入ると軍隊のような制服を着た人達が10人ほどいた。
 にぎやかなのでどうしたんだろうと思って聞いてみると、何と今日はJ.F.Kの誕生日だったのだ。そして、かれらはパークレンジャーということだった。ツアーで家の中を見学させてくれた。

 当時に使っていた家具類がそのまま残されていた家は中産階級のそれという雰囲気で、あのケネデイ家の邸宅とは思えなかった。お父さんはきっとそれほど裕福ではなかったのだろう。

 ツアーが終わると庭に並べてあるライムジュースとケーキをパークレンジャーがわたしたちにも勧めてくれた。ラッキー。しかし、子供たちはひきつった笑いを浮かべ、手でジェスチャーしながら”ノーサンキュー”といってジュースのみごちそうになったのであった。私は、”どうして遠慮するの”といいながら赤と青のクリームで派手派手しく飾られた大人の拳大ほどあるケーキをプラスチックのフォークで取り分け口に運んだ。

子供たちはにやにやしながらわたしの次の反応を待ってた。

”何という甘さだ”思わず口にした。とうてい全部食べられたものではない。
わたしはパークレンジャーに見つからないようにそーとナプキンに包んでごみ箱に捨てた。口直しのライムジュースもまた甘い。どうしてアメリカ人はこんな甘いものを平気で食べるんだ、舌が狂っているとしか思われない。

 子供たちにどうしてケーキが甘すぎるのを知っているんだいと聞くと、学校で誕生日に親がケーキを作って持ってくるんだという。そして、みんながそのご相伴にあずかるわけだが、それが甘くて甘くて。でも、悪いから食べないわけにいかないし。それにこりてもうアメリカのケーキは食べたくないんだという。小さいころからあの甘いケーキを食べさせられていてアメリカ人たちは味音痴になっているんだ。

  アメリカのケーキは覚悟をしてから食べましょう!!