■まずは、わが町の紹介から
 富山県砺波市というところがドクトルカメさんの生息場所である。毎年5月の連休中にチューリップフェアーなる一大ページェントを繰り広げるので有名?なところである。
 賢明な方は、毎年、日本人が観光地にあふれだすゴールデンウイークのころのNHKの夜のニュースで”砺波市のチューリップフェアーには○○万人が訪れました”とアナウンサーが話し、公園一面がチューリップで埋め尽くされたシーンがブラウン管に写しだされるのを頭の片隅にとどめておられる方があるやもしれないが、そうでないかたはぜひ、この際、砺波市という何と読んだらいいかわからないまちが北陸の片田舎にあるのを覚えていただけたらありがたいのだが。

 じつはこのまちにはチューリップのほかにもうひとつの自慢がある。
それは家の広さである。自治省の統計によれば日本で持ち家の平均的面積のもっとも広いのが富山県で、それは145m2らしいが、その中でもこの砺波市はもっとも広いのである。

メインストリートの国道156号線(事故が多いので別名”いちころ国道”ともいう)を走っているとびっくりするような立派で大きな民家が何軒も建っている。

都会から来た人達はびっくり仰天して、あれはお寺ですかと聞くそうである。いいえ、それは決してお寺などではありません。ここの人たちの間では8畳以上の2間続きの畳の部屋を持つことが生きがいなのです。何のためかといえばたまにある会合、法事や見栄のためなのです。しかもそれらは南向きのもっともよい条件の場所が選ばれる。
 そのくせ、普段、家族の生活の中心となる居間は狭い北向きにつくられることがままある。つい先日も、病院の看護婦さんが家を建てたがその坪数を聞いてドクトルカメさんはびっくりした。なんと建坪は100坪を超えるのである。とても東京の人達には信じられないでしょう。

 もう一つの特徴は散居村である。家の周囲には杉を中心とした屋敷森があり、さらにその周囲に水田が広がっている。4月になって庭の雪も融け水田に庄川の水が引き入れられると春の陽光のもとで家々は水の中に浮かびあがり、それはそれは美しい季節が来る。空は晴れ上がり、風はなごやかでまさに春が実感できる。

 散居村はじつは冬も絶品である。吹雪もおさまり家も庭木も真っ白になってきらきらと陽の光が輝く朝。そして、月の光のもとで一面の雪が屋敷森と家々をまさに水墨画の世界の如く黒々と浮かびあがらせる夜。冬の北陸自動車道を走ると天候運に恵まれれば自動車の窓からここに日本のもっとも美しい風景のひとつをみることができる。

■どっちが寒いか、砺波の冬とボストンの冬
 しかし、今回ドクトルカメさんがいいたかったのは何も砺波の自慢話ではない。
 冬の季節の家の中の暖かさについてである。たしかに砺波の家は大きいし、夏は屋敷森が人工のクーラーとなって過ごしやすい。しかし、問題は雪が積もる冬である。

1日中雪が降ることもある季節には気温は0度以下のままということも珍しくない砺波で、木と紙と泥で作ってある日本の伝統家屋はすき間風が入り悲しいくらい寒い。どうして冬の暖房に気をつかわないで日本人は暮らしてきたのであろうか。

ボストンは砺波と問題にならないくらい寒かった。零下20度の世界である。しかし、アパートの中は全館暖房でTシャツ一枚で過ごせたのである。

アメリカ映画にはよく街中のマンホールの蓋から蒸気が洩れ出てくるシーンがある。あのゴッドファーザーやワンスアポンアタイムインアメリカなどでお目にかかったことはございませんか。あれはどうもスチーム暖房につかう蒸気の調節弁からのものらしい。
ブルックラインのアパートの家賃1350ドルにはこのスチーム暖房の費用と台所、お風呂のお湯の代金も含まれていて部屋の中はどこも暖かく暖房代や暖房機に気をつかわないですんだ。どこのアパート、家へいっても暖かく、寒いのは外だけだった。

 反対に日本の家屋は暖房のことを考えてない場合が多い。ことに大きな家をもつ砺波では暖かいのはストーブを入れた居間だけで廊下、洗面所、2階はぞーとする寒さの家が多い。例に違わず高齢者が多くなってきた砺波でもお年寄りはたくさん着込んでこたつにもぐり寒い冬が通りすぎるのを今か今かとじっと待っている。 

 家は小さくてもいいから冬暖かい家がいいなーとドクトルカメさんは思うのである。
(砺波は”となみ”と読みます)