■なんでもかんでも”ハワユー”
 要するに、アメリカでは、いつ、どこでもハワユーで事足りるのである。アメリカ人はハワユーが大好きなのである。そこで、知り合いに会った時など、こちらから先にハワユーと声をかけると、本当にうれしそうな顔をしてグッドと答えてくれるので、こちらもうれしくなってしまうのである。

ただ、たまにはジョークの好きなおじさんもいて、こちらがハワユーとたずねると、ニコニコしながら、ヴェリーバッドと答えてくれるので、思わず笑ってしまい、ホワイ?と聞いてしまいたくなるのである。
ドクトルカメさんも一度はこうやってバッドと答えたいと思っていたが、そのときはその理由を用意しておかないといけないので尻込みしていたのである。

 先日、友人のA氏らがボストンを訪れたときのこと,ドクトルカメさんらはレンタカーを借り出して広大なアメリカのハイウエーをドライブと洒落こんだ。そこでよせばいいのにA氏はどうしても運転したいと言ってきかない。ドクトルカメさんは根負けしてハンドルを渡したのであった。

 ハイウエーは4車線で快適であったが、A氏の時差ボケもあって、降りるべきところを降りないで行き過ぎてしまったのであった。途中で気がついてUターンすべく適当なインターチェンジから一般道へ出たのはよかったが、しかし、なにせ馴れない左ハンドルでかつ右側通行ではうっかり事故が起こっても不思議ではない。

A氏は案の定,他の車にぶつけてしまったのであった。大した事故でなかったのは幸いであったが、とりあえずは車からおりて英語をしゃべりにいかなければならない。

「おい、どうしよう。何といって声をかけたらいいんだ」「そんなむつかしいこと、おれにきくな」「アメリカでは先にアイ アム ソーリーといってしまうと駄目だぞ」。

車から降りて相手のほうへ行ったA氏、その最初の言葉は何と「ハワユー」であったという。
相手がうれしくなったかどうかは定かではないが、ぶつけておいてハワユーもあったもんじゃないとドクトルカメさんは苦笑したのであった。

■”ハワユー”は便利だけど…
 アメリカではもちろん、店へはいってもハワユーである。

最近のアメリカではあちこちにモールと呼ばれる大きなショッピングセンターがある。安全で、きれいで、買い物の好きな奥方には好評であるので、ドクトルカメさんはしかたなく荷物運び係としてついていかなければならない。

 そこにはブテ鍈ック、コンピューター屋、本屋、レコード屋、アウトドアグッズ屋、帽子屋、アイスクリーム屋、眼鏡屋、日用品屋、葉書屋、クリスマス屋、環境保護グッズ屋、ピザ屋、ハンバーガー屋、てりやき屋、ステーキ屋、サンドウィッチ屋と、ひと通り何でもそろっていて、お金さえあれば、まあ、半日は楽しめる。

これらの店屋さんの中でも多いのが、ジーンズ、セーター、パンツなどを売っているリミテッド、ギャップ、バナナパブリックなどの衣料品店である。一度試しにこんな店に入ってごらんなさい。店員から、ハワユーと親しく話しかけられること間違いない。

 しかし、初めて会った人にすぐ溶け込めないドクトルカメさんは、どうしても気はずかしいので小声でボソボソとごまかすくせが抜けない。

そして、どうしてこのオレが、初めて入った店で、一面識もない店員にごきげんいかがかと尋ねられなければならないのか、そして、それに対してグッドなどと答えなくちゃいけないのか。ましてや、ハワユーなどとは聞き返してやるもんかと思うのである。英語で話すのは知り合いだけで勘弁してくれと思うのである。

しかし、そう思っちゃいけないことはドクトルカメさんだって知っている。この、平等がモットーの国では、決して客が偉くて店員は平身低頭するなどという習慣はないのである。

客は商品を売ってもらうことに感謝して、サンキューベリーマッチと言わなければならない雰囲気なのである。むしろ、ハワユーなどと声をかけてもらったら非常にありがたい話で、ここで、10年前から知っているような雰囲気で親しげに話をすると、アメリカ生活もさぞかし楽しいことだろうと思うが、いかんせんドクトルカメさんの英語力が追いつかず、入ったばかりの店なのに(サンキューのサの発音は歯と歯の間から舌を出しながらスーと空気が抜けるような感じで発音しないといけないなどと思いながら)サンキューと言ってあわてて店を出ると、二度とその店には入る勇気が出ないのである。

そして、女房、子どもには何か自分のものを買うと言って分かれた手前、手ぶらで帰るためのいいわけを探さねばならないのであった。