このエッセイは院長がアメリカ時代の思い出をかってに書きためておいたものです。
![]() |
『お医者さんはいらっしゃいますか』その二12/11更新 わたしは、難しい患者だったらこまったなーという内心の不安をかくしながらスチュワーデスの後についていきました。途中の通路でも注目されているようで(本人がそう思っているだけか)、酒に酔った赤い顔をしているかもしれないから、ここは威厳を持った表情をせずばなるまいと訳の分からないことを考えていました。 スチュワーデスに、今はどんな状態ですかねと歩きながら尋ねた。 少し、良くなられたみたいです。 そうですか。それはよかった。(それじゃあ引き返しますというわけにはいかないか)。 ようやく最後部の座席までたどり着くと、30歳台くらいのイラン系の彫の深い、あごヒゲを生やした男性が通路に仰向けに寝そべっていました。 意識はしっかりしているようで眼も開けているので、ひとまず安心。脈を取り血圧がしっかりしているのを確認し、四肢の麻痺や痛みもないようでした(言葉は通じない!!)。 スチュワーデスに今は問題なさそうだから、しばらく様子見ましょう(やぶ医者の常套句)と話して、場を去ることにしました。 やれやれ、これで面子を保って、子供達の前に帰れると思ったらほっとしました。 お父さん、今診てきたよ。大丈夫だよ。おれは名医だよ!!ははは。 家族を連れての旅もこりゃ大変だ。 |
| 『お医者さんはいらっしゃいますか?』 その一 10/9更新 2年前の夏休みに家族を連れてシアトルへ遊びにいきました。成田空港からエアーカナダです。まずバンクーバーへ飛び立ちました。家内がイチローを見に行きたいというのです。 離陸から1時間ほど経ち、大平洋上空を順調にフライトしていた時です。 わたしは日常業務から解放された気安さからシャンパンとワインを飲んでいました。 その時、機内放送が聞こえました。 「機内で気分のすぐれないかたがいらっしゃいます。 ドクターかナースの方がいらっしゃいましたら乗務員までご連絡ください」 わたしは知らぬ振りをしていました。内科か外科の医者の一人ぐらい、のっているだろう。美容外科医の出る幕ではあるまい。隣の娘達と家内のちらっとした視線が目に入りました。これはちょっとやばいかなと思いました。いやいや、ぼくは美容外科医だから、ちょっと専門外だよ。 数分して、また、「どなたかドクターの方はいらっしゃいませんでしょうか?」とアナウンスがありました。わたしはむすめたちの顔色をちらっとうかがいました。「おとうさん、出て行かないの?」といっているようにみえました。いやいや、ぼくはブラックジャックもどきの美容外科医だからと心の中でぶつぶついっていました。 数分して、3度目のアナウンスがありました。こんどは家内と娘達の視線がはっきりとわかりました。ここにいたって出て行かねば父の威厳は損なわれ、家庭は崩壊寸前になるだろうと私の頭の中はコンピューターのごとくに計算していました。どうも誰もいないようだ、お父さんがいってこようかと娘達にささやいて、無理をして笑顔を作って立ち上がり、後ろの方のスチュワーデスに声をかけました。 わたしで良ければみますけど? とても助かります お客さまは一番後ろの通路で寝ていらっしゃいます イランの方で、ちょっと日本語も英語も通じないんですけど えー!!これはこまったなと思いながら、しかし、いまさら引き下がるわけには行くまい、男がすたる。 つづく |