どうも、歳をとってから、色々なところでの受付の私への対応が硬いというか、通り一遍だというか、笑顔がないというか、まあ、親切ではないように感じる。おかしいなー、私の認識では、私はそれなりに紳士然として、髪もそれなりに生えている。若い頃から、教授と間違えられるくらいだ。白衣を着て出かけたらいいかもしれない。
外国へ行ったときもそうだった。ホテルでチェックインを並んで待っていた。レセプションの若い女性は前の人ににこやかに応対していた。笑い声も聞こえた。優しそうな子だ、安心だな、と思っていた。
ところが、私の番になると、彼女の顔がこわばったように見えた。怖い顔をした東洋人が来たと思ったのだろうか。私も苦手な英語を聞き逃さないようにと緊張していたので、きっと表情が硬かったのかもしれない。私の顔が井上陽水に似ていると思えば、その対応もありえるかもしれない(申し訳ない、井上陽水殿の名前を出して)。
次のホテルへ行った時も、対応は似たようなものだった。
私がえらいのは、他人を責めるより、自分を変えなければいけない、と思うところだ。
以来、国内、海外問わず、できるだけ笑顔を作るようにしている。
ある日、鏡の前で笑顔を練習してみた。だが、鬼が笑っても仏の顔にはならず、ただ鬼が笑った顔になるだけだと悟った。
先日、と言っても2月だが、そろそろ断捨離しようと、家内と一緒に銀行口座の解約に行った。そして一緒に席に座った。私は赤いダウンに茶色のニット帽、手袋をした見るからに寒そうなおじいさんの格好だった。銀行の鏡を見たら、井上陽水がニット帽を被ったような怖い顔をしていた。
受付のお姉さんが、「お隣の方はお嬢さんですか?」と言った。
「そんなわけないだろ」と内心ムッとしたが、それを悟られないように、笑顔で、「そうです」と答えた。
家内は慌てて「違います、家内です」。しかし横を見ると、勝ち誇ったような顔をしていた。
私のクリニックには男性患者さんもそれなりに来る。多くは盛り上がったシミの相談だが、目の下やほうれい線のシワが目立つ人もいる。そうした患者さんには自己多血小板血漿(PRP)の治療を勧めている。
2週間後の再診の際、シワが改善して若々しくなっているのはもちろんだが、それ以上に表情が柔らかくなっているのに気づく。そうか、顔の凹凸が少なくなると柔和に見えるのだ。
「あ、これは怖い顔を改善するのに役立つ治療だ」と思い、学会でも発表した。
それ以来、「先生、私の怖い顔を直してください」という患者が来ないかと毎日、心待ちにしている。が、今のところ、まだ現れない。
読者の皆さん、そんな顔の方はいませんか?
そう、あなたです!