AI恐るべし

昭和24年生まれの私からすると、AIなんてものは、もはや「未来」ではなく、「人生の続編」である。

生まれた頃の日本は、まだ戦後の空気を引きずっていた。そこからテレビが各家庭に現れた。最初は街頭テレビ。みんなで力道山を見て、「おおー!」と叫んでいた時代である。その後、自動車が一家に一台になり、高速道路ができ、新幹線が走り、「これからは科学の時代だ!」と大人たちが目を輝かせていた。

すると今度はパソコンである。

最初に見たときは、「こんな弁当箱みたいなもので何をするんだ」と思った。しかし気づけば、ワープロ専用機を経て、インターネットがやってきた。最初の頃のインターネットなど、「ピーーー、ガガガガ…」という接続音だけで、すでに未来感満載だった。

そして今、AIである。

いやあ、ここまで生きていてよかった。

下手すると、鉄腕アトムまで見られるかもしれない。お茶の水博士が現れて、「亀井くん、ついに完成したよ」と言いながら、診察室の横にアトムが立っていても、もう驚かない気がする。

もっとも、私はAIを世界を変えるほど使いこなしているわけではない。せいぜい“ちょこちょこ派”である。

クリニックでは、
第一に画像シミュレーション。
患者さんに「術後はこんな感じになりますよ」と説明すると、「先生、若返りすぎです」と逆に驚かれる。

第二に薬の飲み合わせ。
昔は分厚い本をめくっていたが、今ではAIに聞くと一瞬で答える。便利すぎて、ときどき「お前、本当に医者免許持ってるだろ」と思う。

第三に患者さんへ渡すパンフレットや注意書き。
これがまた上手い。こちらが「術後は強くこすらないでください」と書くと、AIは「優しくお過ごしください」と実に感じがいい。人間より角が立たない。

そして何より驚いたのが論文作成である。

これが楽しい。

以前は文献を探すだけで半日、英訳で頭を抱え、投稿前には「この英文、主語どこ行った?」と悩んでいた。それが今では、AIと会話しながら論文ができていく。関連文献を探し、要約し、英訳し、文章を整え、「先生、この表現の方が自然です」とまで言ってくる。

昔の大学教授が見たら卒倒するかもしれない。

先日、YouTubeを見ていたら、アンソロピックというAI会社のCEOが、「これから10年でガンやアルツハイマーは克服され、人間は150歳まで生きられる可能性がある」と話していた。

最初は「またまた」と思ったが、話を聞くと妙に説得力がある。これまで30年、50年かかっていた医学研究が、AIによって数年で進むというのである。

なるほど。人類はついに、「病気と老化」に本気で反撃を始めたのかもしれない。

しかし、そうなると疑問が出てくる。

150歳まで生きて、どうやって食べていくのか。

すると今度はイーロン・マスクが、「その頃にはロボットがほとんど働くので、人間は働かなくてもよくなる」と言う。

なんだか話が大きすぎて、途中からSF映画なのか現実なのかわからなくなる。

しかも彼は、「人間の仕事は、“何のために生きるか”を考えることになる」と言うのである。

いやいや、急に哲学!

昨日まで「Wi-Fiがつながらん!」と言っていた我々に、いきなり人生論を振ってくるとは。

そうか。
あと10年か…。

150歳時代、ロボット社会、アトム誕生。

うーん。

ちょっと僕は間に合わないかもしれない。

いや、でもわからない。

その頃、病院のベッドでAIに、
「亀井さん、あなたの寿命、あと80年延長できます」
と言われる可能性もある。

そのとき私はきっとこう言うだろう。

「いやあ…もう十分見たよ。」