クオーターとパーキングメーター


■クオーターの基本的な使い方
 アメリカではハワユーのつぎに大切なのはクオーターである。
日本円にして高々20円ばかしの小銭が必需品なのである。日本でいえばこれは間違いなく100円玉の役割である。電話、コインランドリー、コーラやたばこの自動販売機そして地下鉄、高速道路などには必携である。
コインランドリーでは洗濯機、乾燥機とクオーターを10枚ほど用意しておかなければならない。高速道路の料金所ではクオーターを投げ入れるところがあり、持ち合わせがないと冷や汗をかかなければならない。
地下鉄も駅員のいる駅では1ドル札や10ドル札も使えるが、無人の駅から乗った場合、決して運転手は両替やお釣をくれないから、車内でチェンジ、チェンジといってだれか親切な人に両替してもらわなければならない。

■クオーターの重要な使い方
 そして、もうひとつ、クオーターが必要なのはパーキングメーターである。
ボストンの市街ではパーキングメーターのあるところでは路上駐車ができる。
クオーター1枚で場所にもよるが最低20分は止められる。1ドルで80分止められるのでクオーターはいつもポケットにしのばせておかなければならない。

たまたま車を入れた場所のメーターにまだ駐車時間が残っていたりすると思わず顔がほころんできてにんまりとするのである。高々、50円ぐらいのことなのに、その日一日中、非常にいいことがあったような気分になってくるから不思議である。

ところが世の中はそうそうはうまくいかないものである。
 たまたま、繁華街の絶好の場所があいていて車を入れたはいいが、あいにくクオーターの持ち合わせがなく、ズボンを探しても車のコイン入れを探しても、座席の下を探しても一個も見つからず、泣く泣く他車にその場を譲らなければならない目にあったこともあった。
もうそろそろ銀行でクオーターを両替しておかないといけないなーとは思っていたが、後の祭である。

 パーキングメーターの違反ぐらいといって甘くみると大変である。なぜなら交通違反切符をきるおばさんがどこからともなく現われて、時間切れになっている車を見つけてはまるで鬼の首をとったように浮き浮きと情け容赦なく違反切符を車のフロントガラスのワイパーにはさんでいくからである。
 どうも噂によれば彼女らは歩合制で、切符を切った数に応じて給料が貰えるらしい。そうでなければあのように朝から夜まで熱心に職務に励むはずがない。そしてその執念足るや、恐るべきものである。

 たとえば、ドクトルカメさんがいた年の冬は何年ぶりかの大雪で、坂の多いビーコンヒルの町も雪に埋もれていた。ここでは路上駐車はアパートの住民に限られていたが、そこで見慣れない車を見つけたおばさんは降り積もった車の雪を払い除けて、その車が駐車の資格を持っていないのを確認すると、満足したように違反切符を切って行くのであった。
このくらい熱心なおばさんがいるのだから車を止めたときは時間が気になっておちおち買い物もしていられない。

 あるとき、ドクトルカメさんはアパートから荷物を運んできた。そして、研究室の前に車を止めたかったが、周りのスペースは全部、車が止まっていてあきそうにもなかった。仕方がないので、道路から少し引っ込んだ病院の敷地に車を止めておいたところ、1時間ばかりあとになって帰って見るとちゃんとワイパーに紙がはさんであった。こんな道路でもないところに車をとめているのに、どうして違反切符を切られなければいけないんだろうと思うと腹が立ってきて、無視してやろうとも思ったが、これが原因でアメリカ再入国を断わられるような事態になっても困ると思い、しかたなく州政府宛に40ドルの小切手を郵送した。

 切符には事細かに駐車違反となる事例がならべてあった。
車椅子の人専用のところに止めたり、消火栓の近くに止めたりするとことのほか高い罰金を取られることになっている。車を止めようとして場所を探しているとき、たまたま空いているスペースを見つけて、やったぜ、ベイビーと思ってよく見ると消火栓があって、がっかりすることもしばしばである。
また、車椅子の人専用の駐車スペースは公共の場所やスーパーなどでも最も便利な場所に確保してあり、違反する人はほとんどない。
なぜなら、それはほとんどの時間空いていることからわかる。