アメリカの空港

 ■星と飛行機
 夏になってくると、アパートのベランダに出て5ドルで買ってきた椅子に座り、足を棚に投げだしてぼーっと夜空を眺める機会が多くなった。9階の部屋なのでかなたにはボストンの夜景を望むことができる。慣れてくると西の空から星の輝きと見間違いそうになる光がいくつもあるのに気がつく。よく見ているとだんだん光が大きくなってくるのでそれらは星ではなく飛行機の光であることがわかる。そうして注意深く夜景を見回してみると、飛行機らしき輝きがいつも6から8個は空に浮かんでいることに気付いた。アメリカは広大な国なので移動には何かと飛行機を使うことが多く、飛行機に乗ることは日本でいえば電車に乗るのとほぼ同じ感覚なんだろうと思う。

■飛行機大国
 アメリカは飛行機大国である。航空会社ごとにターミナルが分かれていて、タクシーのあんちゃんにも行き先だけでなくどこの航空会社を利用するのか言わないと、まったくとんでもないターミナルに連れていかれてしまう。実際、ドクトルカメさんも行き先だけ告げてタクシーに乗って安心していたところ、目的の航空会社のターミナルではないところに連れて行かれてしまった。慌てて近くにいた警官にわけを話して別のタクシーをつかまえてもらい事なきを得たことがあった。

■飛行機
 シカゴのオヘヤ空港は全米でもっとも大きな空港のひとつであろう。レストランに入って窓を眺めていると、次から次へと飛行機が離陸していく。富山の田舎から出てきているドクトルカメさんはそれを見ているだけであぜんとさせられるし、アメリカの懐の大きさに改めて感嘆させられる。ハブ空港になっているのでターミナル間の移動が長く、乗り継ぎで時間がないときなどは歩く歩道の上を「エクスキューズミー」を連発しながら荷物を抱えて走らなければならず、汗だくになること請け合いである。そして、めざすターミナルビルにたどり着いてもウィングが長く伸びており、ゲートを見つけて移動するのも一仕事である。運よく時間があるときは、スーベニアショップをのぞくとシカゴブルズのさまざまなみやげ物があって見るだけでも楽しくなる。

■注意!!
 ニューヨークでは国内線はラガーディア、国際線はケネディと空港が分かれているので、国内線と国際線を乗り継ぐときは両空港の間をタクシーで移動しなければならない。これだけでもわずらわしいのに、両空港間の道路がしばしば渋滞となるので、ある程度時間の余裕をみておかないと胃潰瘍になる。3月の終わりにアメリカに来る妻子を迎えにドクトルカメさんはボストンからニューヨークに飛んだことがあった。ラガーディア空港で降りて黄色のキャプに乗り、ケネディ空港に向かった。すこし、英語にも慣れ、ボストン――ニューヨーク間の飛行機の中でワインを飲んで酔っ払っていたせいもあり、また、東欧生まれで出稼ぎにきている40台半ばの運転手が愛想よく話しかけてきたせいもあり、べらべらしゃべりながら気持ちよく過ごしているうちやがてキャプはユナイテッド航空のターミナルに着いた。さていくらだろうかとメーターをみると、料金が表示されていないのである。酔っ払っていたので乗った時運転手がメーターをみると、料金が表示されていないのである。酔っ払っていたので確認し忘れていた。いくらだと聞くと100ドルだというではないか。どうも日本人だということで足元をみられていたような気がする。たしか、前に来た時は20数ドルだったような気がする。「そんな、ばかな、いくら高くても50ドルだ。」わたしは憤然と50ドルを渡して車を降りた。降りたところにはポリスの制服も見つけることができた。あー、車を降りてからポリスも見ているところでせいぜい30ドル払えばよかったと思ったのもあとの祭だった。

教訓その1.アメリカではタクシー料金は降りてから運転手の窓際へ行って払いましょう。
教訓その2.むやみに愛想のいい運転手には気をつけましょう。